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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

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一極集中化と多極多様化

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 30年以上焼き物を作ることを生業にしている。というか・・・私は焼物以外の職に就いたことがない。それ以外でお金を稼いだことがない。アルバイトをしたこともないので、純粋に焼物以外の仕事を全く知らない。プロといえば、これ以上のプロはいないと思うし、ほかのことを全く知らないわけだから・・・それ以外の能力は未知数だ。仕事を辞書でひいてみると、しなければならないこと・・・と載っている。そう考えれば、私がしなければならないことは、焼き物を作ることである。もっとも、私は冒頭に書いたようにそれ以外の仕事は、全くしたことがないので、ほかに仕事と言うべきこと自体が存在しない。つまり、焼き物を作ることがが自分がしなければならないことだと認識している。 一般的に焼き物を作るといえば、形を作り火にかけて焼くということだけをイメージする人が多いと思うが、実はその行為は全体のごく一部にしか過ぎない。焼き物を作るという仕事は、簡単に書いても以下の行程がある。

土を掘る→土を精製する→粘土にする→土を捏ねる→成型する→乾燥させる→素焼をする→叩きをかける→絵付けをする→釉薬をかける→窯詰めをする→本焼をする→窯出しをする→検品をする→底を磨く→在庫管理をする→展示室にものを並べる→出荷する・・・以上の行程を全て自分で行うのが、私の仕事だと言うことになる。単に焼物を焼いただけでは、焼物はお客さんの所へは届かない。丸尾焼の仕事は、基本的にこれだけの事を全てこなした上で成立するのだ。勿論、それ以外にも展示会の企画やダイレクトメールの制作もあるし、仕事場の環境を作ることなども含まれる。そう書いた方が焼き物を作るという仕事を説明しやすい。陶芸という仕事は今では珍しくなった、製造から販売までを一所で一貫して行う仕事なのだ。

 現代と一言で問えば、職業化、専門化、細分化、などで表現すことが出来る。インダストリアル・リボリューションとは、つまるところ、職業化であり、専門化であり結果として、細分化である。そのことにより生産性が高まり、量産が可能になり、職業として成立させたから・・・産業革命が成立したのだ。ところが、私の工房はほとんどその逆行程を行っている。土堀から最終的な展示までをこなすわけで、守備範囲は非常に多岐にわたる。しかもその全てを、ある水準で行う必要がある。焼き物を作るという仕事はそういう仕事なのだ。現代とは・・・専門化と細分化にあると書いた、焼き物という仕事を言葉で表すと・・・適度な専門化と総合的なバランスを兼ね備えた仕事と言えるのではないかと思う。

 生産行為の一極化、集中化が進行している。専門化、細分化の進化した姿だろう。 ユニクロの世界戦略とかを聞くと、凄いことだと思うが、私は一定以上には、上手くいかないと考えている。全ての人が同じものを購入するというイメージが私には考えられないからだ。勿論、一局集中化はこれからも継続するだろうし、更に強まるかも知れない。しかし、必ず逆方向の作用もおきて、逆方向への進化が起こるはずだ。私はそれを言葉で表すなら、多極多様化だと考えている。グローバリズムの進展に伴い、より地域極があらわになったように。多極多様化が起こると私はみている。その時にとても重要な役割を担うのが、適度な専門性と総合的なバランスを兼ね備えた仕事をしているところだろう。天草は天草であり、丸尾焼は丸尾焼である。そういう固有名詞な地域を作る際の旗手になりえるのが、そういう職種なのだと考えている。
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