窯を焚くこと・・・窯屋の仕事

工房の普段の様子。展示会の準備のために、慌ただしく仕事に取りかかりつつある。私の所は若いスタッフが多いので、姿だけ観れば頼もしいのだが・・・あと少し、モノを作る量が増えてくればいいのだが、去年と比べればかなり進歩しているのが、一緒に仕事をしていると判る。欲を言えばきりがないのだが・・・もうすこし欲を出して欲しい。

タタラを作るスタッフ。タタラの生産量がかなり増えてきている。要諦は下仕事。下仕事がきっちりと出来れば生産量も上がってくるのだ。今日は2人で種を作り、ある程度の目標を立ててモノ作りに取り組んでいたようだ。このポジションもあと一息で・・・しっかりと仕事が出来るようになりそうだ。

三男の作陶風景。今は一番新人なので、下仕事に追われたりしてなかなか轆轤の前に座ることが出来ない。製造現場ではモノを作る事の出来る人が王様なので仕方がないが、あと一息生産量を伸ばすことが出来れば・・・と思う。

夕方1人のスタッフが夕焼けが綺麗だと言って撮影していた。私は雲は撮影しないと思っていたのだが、思わず彼女につられて夕日を眺めた。iPhonはとても便利なので思わず撮影。そしてアップロードしてしまった。今日の空もやはり秋の気配が漂っている。
昨日の夜は深夜まで窯焚き。窯を止めたのが午前3時だった。普通の窯焚きの時は私がついていることは殆ど無いのだが、今日は磁器の注文の品が満載の窯だったので、次男と一緒に窯焚きをみることにした。もっとも私はそばで色々と話をしたり、陶芸展の事を色々と考えたりしていたので、端から見るととても窯を観ているようには見えなかったと思う。一緒に窯を観ると言ってもほとんど次男に任せっきりの状態で、近くにいただけにしか見えないのだが、理想は1人で窯を焚けるようになることなので、何もしないと言うことが一番の訓練になるのだ。窯焚きのことを書くと、私の所では輪番制で窯を焚くようにしている。4人でローテーションを組むのだが、窯焚き自体は責任者と副責任者の2人体勢で窯を焚くようにしている。
責任者が次の窯焚きでは抜けて、副責任者が責任者になり、次のローテーションの人が副責任者と言うことになるわけだ。こういうローテーションになったのは、一度大きな失敗があり、それは釉薬を作る過程で起こったのだが、調合を完全に1人でやっていたために、本当に小さなミスで大きな失敗に繋がったことがあり・・・それ以来釉薬を作る事も、窯を詰めることも2人で分担して作業をするようにしている。窯を詰めることは工房にとっては死活問題だ。私の祖父は窯は自分で詰めて、作品の選別は人に任せろと言っていた。経営者が窯を詰めた方が効率よく窯が詰まるし、選別は人に任せた方が質が高まると言うことなのだろう。
窯焚きは責任者を1人にしなければならない。2人で窯を焚くと最後の止めの時に意見が割れるからだ。私は今はほとんど窯止めをすることがないが、大きな窯で本焼きを焼成していた時代は、窯を焚く人が一番上位に位置していた。先々代までは窯を焚く火にはおかしらつきのご馳走が出て・・・それから、窯を焚いていたほど仕事場にとっては窯焚きは重要な行事で、それは、ほとんどの支払いを通い帳でした時代だったから、支払いは年に数度・・・そのお陰で、窯効率上、窯が大きくなっていったのである。
窯焚きの夢を見るようになれば本物だ。私の所の18年務めた人は・・・真夜中に窯を焚きすぎた夢をよく見ると言っていた。うぁーっと、真夜中に叫んで起きるのだそうだ。彼は1度大きなミスを窯でやったことがあり、今でもその原体験を引きずっているのだ。以前は窯たきさんという職種が存在していた。先ほども書いたように、窯の中では最上位の仕事で、窯焚きは親の死に目にも会えないと言うくらい責任のある仕事だ。今は窯自体が小さくなったので、そこまで厳しいことは言われないが、基本的には我々の仕事は窯たきさんと言われるくらい、窯を焼くことが重要な仕事なのである。昨日の夜・・・磁器の窯を焚きながらそう言うことを考えていた。
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| 陶芸 | 18:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑