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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

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次の10年の素案作り。 2011年1月27日

 天草の陶磁器の産地化に向けて今後10年間の素案を作り始めている。西暦2001年に私は天草を陶石の島から陶磁器の島へと言う事で10年間の素案を作成し実行した。それから10年が経過したので、改めて・・・次の10年に向けた目標を再構築している。2,001年に作成した素案は、自分で書くことが憚られるが、驚くほど正確に予想が行われ、ほぼ私が考えたとおりの展開になっている。今回再度今後の10年を予想して、天草における産地化の取り組みを進めようと思うのだが、その前段にあるのは、今現実の社会がどのような方向を向きつつあるのかを、しっかりと考えてみることから始まるのだ。ここをしっかりと見極めないことには、今後どうなるのかが全く判らない。単に天草だけを考えてみても、正確な予想など出来るわけがない。日本が今どういう状況にあり、九州が今後どのような形勢となるのか・・・さらには熊本はどうか・・・と言うことを考えて初めて天草を予想することが出来る。予想した結果を描いてみて、その予想を元に、どういう将来のビジョンを作るのかが、今私が行おうとしている天草の産地化へ向けての取り組みの醍醐味だ。

 現在を検証して将来を思い描くことを、英語ではビジョンと言うらしい。ビジョンとは視力という意味だが、照らし出した光の先という意味もあるようで、それは将来のことを予測することのようだ。時々人と話していて、ごくごく近い将来のことをみえていない人がいるが、見えていないのではなく、観ようとしていないのかも知れないと思う。将来を予想することは実際にはとても知的で楽しいことだからだ。私は良く我々はどこから来て、今どこにいて、今から何処へ行こうとしているのかという発言をする。私達の仕事は誰かが道を造ってくれるわけではないので、常にその事を繰り返して問い続ける必要がある。過去を知らなければ、今が判るわけが無く、今が判らなければ、未来を見通すことが出来るはずがない。私が将来を予測するにあたって一番重要視するのは、今までがどうだったのかであり、結果として今がどうなっているかと言うことだ。このベースがないと将来を見通すことなど出来るはずがない。暗中模索を続けても本当の回答など出るわけがないのだから。

 私は良く昔の話をよく知っていますねと言われることがある。過去のことについては比較的知っている方だと思うが、よく知っていると言われるほどではないと自分では思う。私は歴史学者ではなく、一陶芸家に過ぎないので、歴史を体系的に知っているわけではない。年表が頭に入っているわけではないからだ。勿論、大きな流れを頭に入れなければならない時には、年表を引きながら考えるのだが、大まかな流れが頭の中に入っていれば、それ以上知る必要はないと思うからだ。たとえば昭和25年から30年代にかけて天草の窯は衰退期に入る。衰退する原因はプラスチックとコンクリートの普及だ。知識としてみればこれで十分。因果関係が判れば・・・私には良いのだから。このことによって天草の甕や土管を作っていたところは窯の火を止めてしまう。歴史学者であれば・・・天草に昭和・・・何年にコンクリート会社が出来て、その結果何年に○○窯が廃業したと言うことを調べるのだろうが、私はそこまで調べようとは思わない。大きな流れが頭の中に入っていれば事足りるからだ。しかし・・・少し周りを見回してみると、そういう因果はどの焼物の産地も同じで、この頃に窯の数が激減している産地が多いことに気がつく。社会の変化が窯業を直撃したと言うことが判る現象だ。この危機を救ったのが民芸と個人作家。それから伝統的工芸やクラフト運動・鑑賞洋陶器・生活陶器の出現だった。つまりここで何が起こったかと言えば・・・陶芸の多様化が発生したことになる。

 その事が頭に入っていれば、先進地を調べれば、我々が当面どうすればよいのかは容易に構築することが出来る。私が○○焼と○○焼き(これは秘密)である。この二つの産地のあり方は、とても興味深い進化の仕方をしている。この二つの産地の良いところを取って、今後10年計画の素案を作ろうとしている。もっとも、それだけでは駄目で・・・それにあと一つ何か天草独自の展開を考える必要があるのだが、それが天草の焼物にテイストを与えるエッセンスのような物だと思う。素案作りは、我々がどこから来て・・・今どこにいて、これから何処に行くのかという・・・とても大きな進路だと思う。判断を誤ると、失われた10年になるし、しっかりとした計画を立てると実りの10年と言うことになる。産地化への道筋は・・・現時点では立てることの出来るのは私しかいないと思う。次の10年の始まりは2021年。私は63歳になっている。その時も同じ事を繰り返しているのか・・・それとも他の誰かが考えているのか。。。そんなことを考えながら、素案作りに追われているところだ。
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