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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

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1日二度のミーティング・・・本当は盗むものなのだが・・・2011年6月29日

 次男が帰ってきてから朝夕二度のミーティングを始めている。理由は工房の質を何としても高めたいと思うからだ。今の工房は人数こそ多いが、仕事をある程度のレベルでこなす人が少ないので、様々な局面で思わぬことが起こる。経験値の高い工房では考えられないようなミスが頻発するのだ。単純な作業が極端に遅いという悩みもある。これも経験値が低い故に起こることで、経験値が低い故に起こることだろう。工房のスタッフはおよそ10年で工房を離れ独立してゆく。簡単に言えば経験値0から始まり、およその仕事を任せられる頃に工房を卒業するという流れが今の工房のスタイルだ。その事によって工房には常に若い人がいると言うことになるが、中堅の技術者が居ないと言うことが当たり前になってくる。中堅の技術者は何処の工房でも一番安定して仕事の出来る人達だが、彼らはほとんど独立してしまい。工房には経験値の低い人が常に多数いるという状況が続く。今の工房はスタッフが10名居てそのうち9名が20代。しかも経験年数3年未満が3人いる。私は勿論プロフェッショナルだから、当然ある程度の知識は、みんなが持っているという前提で物事を構築する。私の頭の中にある工房の姿と、現実のスタッフの力量の違いが、時々大きな齟齬を生んでしまうことになる理由はここに存在する。

 ミーティングをすると生産量が向上する。がみがみと指示を出し続けるからだ。私はあまりミーティングを好まないのだが、好まない理由はミーティングを始めると、スタッフが益々考えなくなるからだ。指示を出すと指示を待つようになる。指示を出されると指示を出されることが、当たり前になってしまう。指示を出す間は一本立ちが出来なくなる。そして一番の負担は指示を出し続けなければならなくなることだ。勿論、私は沢山の若い陶芸家修業中の人と接してきたので、若いスタッフの力量は手に取るように判る。今のスタッフはそれぞれ非常に真面目な人達なので、一生懸命に仕事をしていることは理解出来るのだが、それにしては出来高が低いと思う。出来高が低い理由は簡単に言えば雑用をお座なりに考えているからだ。雑用は雑用と書くが・・・本当は決して雑な用ではない。雑用とは毎日必ずしなければならないことで、毎日確実にこなさなければならない仕事が、雑多にあるから雑用なのだと思う。自分の生産量を上げるために、必須のことは雑用を徹底的に省力化することだ。雑用を省力化出来るかどうか・・・あるいは省力化するために考えを進めるかどうかは、仕事の出来高を上げる根本的なテーマになる。

 しかも、恐ろしいことに雑用に関しての考え方の習熟度は人生に対しての習熟度と密接に繋がっていて、雑用が出来る人は仕事が出来る。雑用が出来る人は仕事の工夫が出来ると言う人が圧倒的だ。経験上・・・雑用が出来る人で仕事が出来ない人は居ないが、雑用が出来ない人で仕事が出来る人も居ない。習熟度が高く経験値の高い工房では当たり前のことが当たり前として存在する。しかし、習熟度が低く経験値も低い工房では、当たり前のことが不満として存在する。私の工房はこれからも暫くは経験値の低い人達と仕事をしなければならないだろう。とすれば・・・どうやって雑用の重要さを伝えていくのか。あるいは時間としっかりと向き合うという状況を作り上げていくのか。その事を考えたら・・・私自身も気が重く。若いスタッにとっては拷問のようなミーティングを積み重ねるしかないと思ったのだ。手職とはと問われれば・・・やはり経験値の積み重ねとその範囲での合理性の追求だと思う。以前であれば、どんな工房にも親方の下には経験値の高い職人が控えていて、一から十まで様々なことを叱ってくれたのだろうが、今の工房は若いとは言え横並びで人が仕事をしているので、あまりそう言った指導が期待出来ない。

 人がいない以上。私が直接教え込まなければならない。私以外に指導する人間がいないからだ。もう一つの理由は今のスタッフがある程度のレベルまで達してきたと言うこともある。右も左も判らない人にいくら本当のことを話しても、しっかりと受け取ることが出来ない。相手が受け取るだけの準備が出来ていなければ、いくら話をしても伝わらないからだ。そろそろ本格的に上手くなりたいと思い始めている兆しがある。さらに加えて次男が帰ってきたところだし、このメンバーである程度の期間、仕事をしていくだろうと言うこともはっきりしてきた。ならば、私の負担はかなり大きくなりはするが、ここはしっかりとミーティングを重ねていく方が、全体としての仕事の伸び代が高くなるだろうと考えたのだ。以前私は頻繁にミーティングを重ねて時期があり、その時はその時で特殊な時期だったのだが、今回も若いスタッフばかりと仕事をするという特殊なケースに陥っている。もう一歩で最初の階段を登る人が沢山控えている今だからこそ、しっかりと焼物のことを話さなければならない。手職の基本は合理性だと書いた。以前の職人であれば、盗むと言うことで仕事を覚えていった。その工房で一番仕事の出来る人の技術を目で盗むことが、一番合理的な仕事の覚え方だ。それは今でも変わりないのだが、今の若者は人の技術を盗もうとはしない。だから、毎日二度も時間を作って伝えなければならなくなる。一見合理的だが・・・判っている人間にとっては無駄以外の何物でもない。今の時代の難しいところかも知れない。
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