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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

2014年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年04月

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近代陶芸をどうとらえるのか⑤

 伝統的工芸品の産業規模は長期低落傾向が続いている。これは主要産業が生産拠点を海外に移転した要因とほとんど同じ理由だ。経済成長が続き賃金が上昇し、労働集約型の産業が海外移転したように、国内でしか生産できない工芸品は相対的に価格が上昇した。国内生産をしている以上、どうしても避けることが出来ない問題で・・・結果として作品の値段が上がる。

 2番目の要因として考えられることは、技術習得に時間がかかることが挙げられる。手でモノを作る技術習得には長い年月がかかる。轆轤でモノを作る技術は一人前と言われるまでには、10年の時間が必要だ。この間に数百種類のかたちを繰り返し作り続けて、初めて一人前の職人と言われるようになる。江戸時代であれば12歳を過ぎたあたりから、修行を始めたそうだが、現代では早い人で18歳、大学まで進学した場合は22歳からの修行と言うことになる。

 しかも、手でモノを作る工房で弟子をとるところは非常に限られてきている。理由は弟子を養成するためにコストがかかるからだ。技術を持っていない人に対価を払うのが厳しくなってきている。全くの素人が最低限の技術を得るまでには、最短でも3年の時間を要する。弟子を取らなくなっていることの背景には、この3年間の負担が難しくなっているのだろう。弟子としての修行は厳しいものがある。それは師匠にとっても厳しく、弟子にとっても厳しい・・・そんな時代に突入していると思う。

 徒弟制度の補完を何処が担っているかと言えば、美術系の大学だったりする。しかし、大学では徒弟制度のような教育は出来ない。大学は知識を中心に教えるところで、技術を中心に教える場所ではないからだ。現場と学校は決定的に違っていて、現場には現場で覚えなければならないことが山ほど存在する。工藝という産業は本来は現場主義で成立する仕事だと思う。現場主義というシステムが崩壊の危機に直面している。現代とはそういう時期なのかもしれない。

続く
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