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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

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土台を作り上げることが産地化へ繋がり観光への道を切り開くのだ。2011年5月2日

 連休の合間の平日。こういう日は休みなのか休みではないのか判断がつきづらい。工房を訪れる人は年配の人が多く・・・あまり連休は関係ないという感じの人が多いが、逆に今日だから休めるという人達もいて・・・いっそう、休みなのか平日なのかが判り辛くなっている。五月の連休は日本人にとってとても大きな節目になっていると思う。日本人の特性だとも思うのだが・・・この時期は多くの人が移動する。すでにそれは恒例の年中行事になっており、この時期は家族ずれで移動する人達が多い。秋も並びの良い連休があるが、秋の連休よりも5月の連休の方が盛んなのは、やはり、この時期が季候も良いし、家にいるのが勿体ないくらいの季節だからだろう。工房周辺の緑が鮮やかだ。若やいだ緑と薫風というのだろうか、長閑な風が漂い・・・幸せな空気を運んでくる。もっとも今年は東北の震災があり、それどころではない人達も沢山存在するが、九州・・・特に天草は春から初夏にかけての空気が長閑に漂っている。私の工房はこの時期は休まない。多くの人が工房を訪れるので・・・お客さんと話をしていると、色々なところからやって来た人がいるのでとても楽しい。今日一番に話をしたお客さんは、大分から来た人達だった。のんびりと話をしながら・・・ゆったりとした時間を楽しんだ。

 ゆっくりと時間が流れる天草。そう言われることが多い。慌ただしく観光地を回るのも楽しいかも知れないが、ゆったりと流れる時間を楽しむゴールデンウィークも良いと思う。慌ただしく移動する旅の途中にノンビリと過ごす時間があって良いと思う。天草はそういう所なのだと改めて思っている。天草はのんびり過ごす所として、他の観光地と差別化を進めていけばいいと思う。今の時代は観光が過剰に産業化している。観光地と言われる所には人が群がり、そのなかでも名所と言われるような所には押すな押すなという状態になる。名高い場所には皆が行きたがるわけだが・・・天草はそういう観光地を目指すべきではないと思う。その場所へ行けば・・・ゆったりと時を過ごすことの出来るような場所を作れば、素晴らしい所になるのではないだろうか。すぐに結果は出ないかも知れないが・・・方向性として考えればそれが一番なのかも知れないと思う。外から来るであろう人のために自分たちの生き方を変える必要はないだろう。この土地の本質的な素質に感応出来る人がやってくればいいのではないか。改めてそんなことを考えていた。

 私は陶芸の産地化へ向けた取り組みを10年以上続けている。産地形成への道のりは険しくて気が遠くなるような作業だが、冷徹に考察しても取り組みの成果が着実に出てきていると思う。産地形成は一見遠回りのようだが、観光的な視点で見ても本当は一番の近道だ。陶芸の産地化が進めば、生計を立てている陶芸家が沢山存在することになる。そこには嘘ではない本当の生活が存在していて、普通な意味で人の手で作られたモノが生み出されてくる。当然そこには本当のモノが存在するので、人が集まってくる。工業的な意味での大量生産ではないので、あまりジタバタしてモノを売る必要もない。本当のモノがある所の強さは・・・本来そこにある物を売り出すわけだから労力も何もない所から比べると少なくて済む。陶芸家は本来は発信体なので、発信する個が集積度を高めていくと・・・他の何処にもないような発信が出来るようになる。今の天草の陶磁器は、それが出来る直前の段階まで出来上がりつつある。その事を自覚しながら前へ進んでいかなければならないと思う。未来がみえている人は限られている。見えている存在だけが・・・前へ進めるのだと思う。その事を肝に銘じながら、進んでいきたいと思う。

 本当のモノを沢山作り上げることが出来れば、人が沢山集まる所はすぐに出来上がる。私の中での本当は陶芸の産地だ。陶芸のメッカを作る事が出来れば、そこで仕事をしたいと思う人が集まってくる。そこに焼き物を作る人が集まってくれば、焼き物が好きな人は黙っていてもやってくる。各々が自分の信じる焼物を焼き続けるだけで、焼物に興味がある人がやってくるようになるのだ。そこで生産されるモノを求めて人が集うようになれば、焼き物を好きなお客さんを求めて作り手が集まってくる。物事の循環がよい方向へ進み始めると、良い方向へ連なる循環が生まれる。産地形成までのプロセスは確かに長い道のりだが・・・一旦出来上がると強固な土台が形成され、時間軸に耐えられる産業として地域の誇りになるものが生まれる。私の周りには現在8名もの20代のスタッフが一緒に働いている。それだけでも十分な兆しだと思うのだが、それ以外にも・・・私の周りには色々な兆しを感じる出来事が起こっていて、天草における産地化への道のりは希望の段階から、実現の段階へと進みつつある。本物を作り上げるためには時間が掛るが、一旦、本物が出来上がると強固な現実が出来る。進めなければならない産地化へ向けた取り組みの実りが、見え始めているのだから。
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| 陶芸 | 12:37 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

天草

昨日は甥っ子の節句のため天草に帰ってました。確かに普通の休日くらいの車の量だったように感じます。他県ナンバーは多く見かけましたが、多分帰省客だったように思います。先日も友人からG.Wの天草の事を聞かれましたが、自信を持ってお勧めできませんでした。長い渋滞とお店の入りづらい状況を考えると、天草の良さである「時間のゆっくり感」と「人の温かさ」が感じられない気がしたからです。また何が催されてるのかも分かりませんでした。その友人にはまた別の機会に天草を堪能してもらおうと思っています。
この時期の天草を紹介するにあたり自分はまだ「良さ」に気づききれていません。新緑やドライブには良い時期だと思いますが、「旬のもの」や「この時期だから体験できる」といった付加価値をあまり感じ取れてません。このような事を多く見つけられていくと自信を持って天草観光を勧められる気がします。
また、せめて観光が見込まれる時期だけでも料理屋の器を地元のものにしてみたり、料理の説明と同じように食べる前にどこの物かなどを説明していただくと足を運ぼうという気になると思います。
自分も良く結婚式などのお祝いごとなどに買わせてもらっていますが、「使ってるよ。ありがとうね」と言われると本当に嬉しく思います。

| 荒木 啓太 | 2011/05/02 17:13 | URL |

 いつものぞいて頂いて有り難うございます。天草の観光的な意味で最大の問題は、企画と立案、それから広報だと思っています。観光については振興する立場の人達でさえ、天草観光の理想像を描いていないのが現状です。どんな観光地にするのか・・・これはとても大きなポイントであり、もっとも基本的な事柄ですが、それさえ描けていないのが現実です。
 私は天草の場合・・・これから先、更に拡がるであろう、移動時間の格差をどうやれば補えるのかを考えています。熊本は新幹線や高速道路網の充実で、1時間半あれば相当な所でも行くことが出来るようになりました。対して天草は依然として何処へ行くのにもに時間プラスアルファが必要です。この時間的な格差はこれから以降、ボディブローのように天草観光を低迷させる原因となるはずです。
 結論としては、天草は中長期滞在型の観光へシフトするしかNight私は考えています。一泊二日とかではない、一週間滞在する場所。あるいは一月滞在する場所という観光地化です。
 中長期滞在して、例えば陶芸を本格的に学ぶとか、ある程度の時間が必要な何か(船の免許・何らかの資格取得・自然のインストラクターの資格取得等)そういうことを連携して勧めていくことでしか、方法がないのかも知れないと考えている所です。

 ゴールデンウィークを全て天草で過ごすと考えれば・・・のんびりしてとても良い所だと私は思っています。

| 金澤一弘 | 2011/05/04 21:11 | URL |















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