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丸尾焼窯元日記

熊本県天草市にある丸尾焼という窯元の窯元日記です。陶芸に興味のある方はチェックすると面白いかも・

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日常という地平

 金憲鎬氏と私はほぼ同じ年令。この3年間ほど毎年天草に来てもらい、仕事の様子を若い作り手に見せてもらったり、モノ作りの思いを話してもらっている。金憲鎬氏の前に天草に来ていただいていたのが、鯉江良二先生。5年ほど私の工房に毎年来ていただいていた。鯉江先生は日本を代表するような巨匠。次男を半年間だが預かっていただき、指導して頂いた。鯉江先生の素晴らしさは人間性から発していると思う。天草の若い作り手は鯉江先生の姿を直接、見ることが出来て幸せだと思う。巨匠の佇まいを見ることが出来るのは、本当に稀有な経験だ。鯉江先生が陶芸家として、どんな息遣いかを直接見る機会を持てたことは、将来の若い人にとってかけがえのない財産になると思う。鯉江先生は私に『人を掘れ』と書かれた。この言葉を肝に銘じ、私は陶芸という行為を考え続けている。

 金憲鎬氏とは年齢が近いということもあり、色々なことを話す関係だ。金さんは作家として仕事を続けている人なので、陶芸の産地形成を考えている私とは方向性が違っている。瀬戸という産地に育った人であり、そもそも産地形成などという、馬鹿げたことは考える必要はない。技術について話になった時。金さんは技術は必要であれば獲得するものだと話した。産地の場合・・・技術は転がっているのだろう。天草の場合は技術は意識しなければ、消え去ってしまうものだと考えていたので、その言葉にハッとしたことを鮮明に覚えている。考えてみれば陶芸ほど模倣の容易な仕事はないかもしれない。粘土という類まれなマテリアルを使い、培った技術で手業を模倣するのだから、技術を獲得することは、さほど難しいことではないとも思う。技術とは何なのかをもう少し深く考えていかなければならないと、思い至ったのは金憲鎬氏のおかげである。

 昨日の日記に書いた金さんにとっての珈琲。それは彼の立つ場所を明確にした地平のようなものだ。大坊氏の仕事を見て『大坊勝次になりたいと思った』と金さんはいうが、人生の基準点を自ら設定することにより、日常に線を引いたとも言えるだろう。日常とは何なのか・・・『日常とは自らの基準線』だ・・・私は考えている。人はその基準線を定規として使いながら、自らを律していくのかもしれない。作家として金さんを考えてみれば、珈琲と大坊勝次という基準線を引いてしまえば、その基準線を伸ばしていくことにより、様々なインスピレーションを得ることができるはずだ。地平線が高ければ高いほど作品は昇華されたものになるだろう。鯉江先生の地平が鯉江自身なのに対して、金憲鎬氏は冷静な他者を含めてのラインが有るように思える。鯉江氏は瞬発の人だと思う。対して金氏は冷静な地平を持つ人だと思う。日常をどう考えるのか・・・それは陶芸作家にとっても重要なことだ。

 若い陶芸家がこの日記を読んでいるとは思わないが、ものを作る人間の矜持として、日常の何かに拘ることから始めればいいと思う。お茶でも良いし、謡のようなものでも良い。出来れば孤高な人が存在する形のない何か。あまりにも高いものであれば、線自体も高くなりすぎるかもしれないが、自分がどうなりたいのかを考えれば、高みに線を引いてみることも重要かもしれない。同じ仕事の頂きを目標にするよりも、違う頂のほうが線が引きやすいとも思う。そう考えれば金憲鎬氏の選択は見事だと言わざるをえない。日常を高めることが出来れば、それは必ず人生に反映されるだろうし、作品に変化が起きるだろう。どんな仕事であれ、仕事を決定付けるのは紙一重の違いだから、紙一重の違いを作る根源が日常なのだと思う。禅僧の場合は掃除という日常を繰り返すことにより磨かれてゆくと聞いたことがある。丸を書き続けることにより高まっていくとも聞いた。日常をどう捉えるのか・・・日常をもっと考える必要がある。
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